自衛隊を知らない人達について(3)

「いわれのない中傷や誤解から隊員を守ること」「世間の無理解への対応」および「隊員の苦労を世間に知らせること」について、以下に私見を述べてみます。

1いわれのない中傷や誤解から隊員を守ること

 もう20年も前の真夏の夜、日航ジャンボ機が御巣鷹山腹に墜落したとき、習志野や木更津の隊員が酷暑の中で、昼は遺体収容、夜は現場までの道作りに黙々と励みました。
当日夜7時に出動要請を受けましたが、月齢が新月に近い暗さだった上に付きは午後4時頃に沈んでおり、日没時刻と要請時刻が重なる不運がありました。

ヘリコプターが空中停止(ホバリング)するときはメインローターの起こす風を地面に当てて、はね返る空気をクッション(対地効果)に利用するため、傾斜のある場所では低い方に機体が傾いてひっくり返ってしまうので、平坦な地形を探す必要があります。暗闇の山中ではヘリコプターの運用は米軍も不可能だと言っておりました。

 陸上自衛隊は夜明けを待って、ベテランパイロットが習志野空挺隊員を尾根筋のわずかな平坦地を見つけてロープで降下させました。

山の尾根と言うのは前後左右だけでなく上下方向にも複雑な風が吹き、ヘリコプターが少しでも斜面上に流されると、谷底へ真っ逆さまに墜落してしまいます。

聞くところによると、操縦士は約40分間にわたるホバリングため、緊張のあまり手袋や靴の中に溜まるほど水を浴びたような汗をかき、操縦桿を握っていた指は硬直して他人の力を借りなければ離れないぎりぎりの状態でした。

 ところが、ヘリコプターの特性や当日の気象・地形の特質をよく理解していないメディアや評論家達が「生存者3人」の報告を逆手に取り「自衛隊が夜寝たから他の多くの命が救えなかった。」と非難を浴びせてきました。

このときは従来になく、自衛隊は機敏に「朝雲新聞」や「月刊文芸春秋」の誌面を使い、運用面と技術面からすみやかに反論し、丁寧に説明を行いました。
が…

佐藤守1等空佐(当時)と小林武一2等陸佐がマスコミの的外れの批判に反論する投稿に、メディアは暫くして指揮系統の問題にすり替えようとしました。

 しかし、救援出動の自衛隊車両が高速道路料金を払わされたり、遺体収容の為に設置されたヘリポートに、自衛隊の航空管制を無視して新聞社のヘリが使用した等の事実が暴露され、メディアの中にも自衛隊指示の論調が現れました。
 明らかに社会の思潮に変化の兆しが見えてきました。

 私もこのとき、多少の知己を得ていた2人の大学教授が少々見当違いの批判を述べていたので、私の身分を明かして、私信と電話で丁重に注意を促しました。
私たちのように自由に物を言える立場の者は、若い隊員を根拠のないメディアの誹謗、中傷から守るつとめがあると思います。

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